2024年8月25日(日)
現在開催中の企画展「とちぎのキノコ」の関連イベントとして記念講演会を行いました。
講演は、神奈川県立生命の星・地球博物館主任学芸員の折原貴道氏による「市民が支える菌類研究-『新・入生田菌類誌』完成までの道のり」。
キノコやカビなどの菌類を担当されている折原氏のキノコ歴は5才からとのこと。
現在の研究者への道は、そこから始まっていたのですね。
当館の菌類担当、山本学芸員も7才からキノコの道へ足を踏み入れています。
上の写真で折原氏が手に持っているのが完成した「新・入生田菌類誌」で、400ページを超えるりっぱな報告書です。神奈川県博がある小田原市入生田の菌類全般と変形菌が189種、カラー写真や線画とともに掲載されています。市民の協力があって完成した本誌はどのように完成したのでしょうか。
神奈川県博の菌類ボランティアグループ、略して菌ボラの方々が定期的に活動されています。
メンバーは、キノコのことは何も知らないけど面白そうだからと参加される初心者から菌類を勉強している学生、アマチュア研究家で、年代も中学生から70代と幅広い立場・年代の方で構成されています。
活動は、野外調査から始まり、採集したものを標本にして収蔵庫に収めるまで行っています。
野外調査はキノコに限らず、各自興味があるものを調査したり、自分の都合で活動できる日に参加したりと肩の力を抜いて活動されているそうです。
「新・入生田菌類誌」作成にあたっては、菌ボラを中心にした学生や市民による入生田菌類誌調査グループが結成され、調査から執筆・編集まで折原氏の監修のもと市民の手で行われました。いろいろな経歴をもつ人が集まっているので、写真の撮影が得意な人、編集が得意な人と、得意分野を生かす場面も多くあったそうです。
市民の手によるものとはいえ、学術的に利活用できる内容で、希少種の保全活動をする際には重要な資料にもなるそうです。予算確保やコロナ禍での活動制限などの課題を乗り越え7年の歳月をかけて出版されました。
ぜひ、たくさんの人にご覧になっていただきたいです。
他にも、レッドデータブックの調査や小学生と行った菌類調査のお話をしていただきました。
貴重なお話をありがとうございました。
当館でも、菌類研究は市民に支えられています。収蔵庫には10000点を超す菌類の標本が収められていますが、やはり市民の協力がなければ集めることができません。
菌類は150万種存在しているといわれていますが、発見され名前がついた菌類は約12万種です。
とても学芸員だけでは、明らかにすることはできそうにありません。これからもたくさんの人の協力が必要になりそうです。
ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。
企画展「とちぎのキノコ」は11/4まで開催しています。
今後の関連行事です
・学芸員とっておき講座 「とちぎのキノコ図鑑」
講師:当館学芸員 山本航平
10月20日(日) 13:30~15:00
・学芸員による展示解説
10月6日(日) 両日14:00~15:00
*要観覧料
・観察会「秋のキノコ観察会」
9月14日(土)10:00~12:00 栃木県中央公園
*要予約 定員30名(ただいま、キャンセル待ちとなっております)
・体験「キノコペーパースタンドをつくろう」
9月21日(土)14:00~15:30 みーたん広場
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栃木県立博物館では、企画展のほかにも展示が盛りだくさん
・テーマ展「世界の!栃木の!!コガネムシ~カブトムシだってなかまだよ~」(9/23まで)
・テーマ展「武士の装い-館蔵刀剣武具展-」(9/23まで)
・テーマ展「栃木の畑作~麻・麦・かんぴょう~」(11/10まで)
ぜひ、足をお運びください。
(自然課 猪狩)
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