12月17日(日)13時30分~講堂にてとっておき講座「とちぎのレッドリスト最新情報!」を開催しました。今回はリストの5分野の担当者がそれぞれの注目ポイントなどを交えて今回のレッドリスト改訂について解説しました。
まず吉田学芸員が、地形・地質分野について説明しました。
地形・地質のリストは、今回の改訂では大きな変化は見られなかったため、調査を行った中で感じたことが紹介されました。
(吉田学芸員の話)
「第四紀降下軽石層について、男体山の軽石層が見られる地層を探しに何度か今市から日光を訪れました。少し探せば見つかるだろうと思っていましたが、昔あった露頭は草木が生えて見えなくなり、新しい露頭を見つけるのに苦労しました。ちょうど大規模な工事をしていて地面を掘り起こしていたため、男体山の噴出物である今市軽石層と七本桜軽石層が見える露頭を見つけることができましたが、工事が終わればコンクリートに覆われてしまい、また見えなくなります。」
「露頭を見つけるのは、意外と難しいですが、地面の下にはちゃんと軽石層が保存されています。」
次に維管束植物・植物群落分野について星学芸員が説明しました。
(星学芸員の話)
「維管束植物はレッドリスト掲載種が519種から523種になり、サガミランモドキやタンザワサカネランなど4種のランが追加になりました。また、県内で絶滅したとされていたコキンバイザサが再発見されたり、シダ植物であるイワヒバが数と産地が増えていることから準絶滅危惧から要注目に変更になったことなど、変化のあった種がいくつかありました。」
「植物群落はハルニレ群落2つ、エゾノコリンゴ群落、カラコギカエデ群落、フモトミズナラ群落が追加になり54群落から59群落になりました。ハルニレ群落は希少種であるクロビイタヤが生える群落として保全の必要性があります。」
続いて、魚類・鳥類・哺乳類分野について小笠原学芸員が説明がしました。
(小笠原学芸員の話)
「魚類では、新たに追加されたキタドジョウとトピック種としてキンブナを紹介します。キンブナはギンブナとよく似ており、見分けるときのポイントは以下のとおりです。」
鳥類では、ヨシゴイが話題に挙がり、面白い立ち姿の写真が映し出されると、お客様からも少し笑みがこぼれていました。
哺乳類では、情報不足とされているミズラモグラとそれに似ているアズマモグラについて、どこに違いがあるのか実物とともに説明がありました。
次に両生類・爬虫類分野について、林学芸員が説明しました。
(林学芸員の話)
「両生類の掲載種は14種で、今回1種追加になったのは新種のイワキサンショウウオで、栃木県では茂木町に生息しています。」
「和名・学名変更になったのはムカシツチガエルで、やはりツチガエルから新種として分けられました。これまでのところ、栃木県で「ツチガエル」と呼ばれていたカエルはすべてムカシツチガエルと考えられています。ツチガエルとムカシツチガエルは、オタマジャクシのおなかの斑点の違いで見分けられています。
爬虫類の掲載種は10種で、こちらは変更はありませんでしたが、ヒガシニホントカゲは見つけづらくなっているものの一つです。
両生類・爬虫類ともに、希少なものだけでなく減少のしかたが激しいものがレッドリストに掲載されています。そのため、アズマヒキガエルやトウキョウダルマガエルなどの身近な種が含まれています。」
最後の永嶋学芸企画推進員が昆虫分野について説明しました。
(永嶋学芸企画推進員の話)
「昆虫分野では、生息環境の悪化が懸念されている水辺と草原を重点的に行いました。また、過去に採集された標本や希少種が記録された文献の調査を行いました。
今回の改定で、絶滅の恐れが高まったのは、ヒョウモンチョウやミヤマシジミなど12種、新たに生息地が見つかるなどして絶滅の恐れが低くなったのは、オビベニヒメシャクやウスズミケンモン含め9種が掲載されました。また、前回のリストから新たに掲載された昆虫類が10種でした。第四次レッドリスト改定により昆虫類の掲載種は、563種から568種になりました。
改定の結果、新規に掲載された種の多くが以前より減少しているものや環境省のレッドリストに掲載されている種類など、情報不足の点があるので、次回の改定までに重点的に行いたいと考えています。」
5人の説明が終了した後、講堂前方に展示したそれぞれの分野の標本を見ながら、参加者はそれぞれ興味のある分野の学芸員に質問をしていました。
現在、2階ロビーにて「栃木県版レッドリストが新しくなりました!~絶滅のおそれのある生きものと地形・地質~」を展示しています(12/9~2/4 魚類・両生類・爬虫類、2/10~3/24 甲殻類・貝類・土壌動物)。また、テーマ展「ぼくらの自由研究~川の地形と石~」(~3/3)、「昔のこと知ってっけ?~道具を知れば暮らしが見える~」(~3/31)、「巡回展 栃木の遺跡~最近の発掘調査から~」(~2/4)も同時開催していますので、ぜひ足をお運びください。
(自然課 三宅)
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