「鑑真和上と下野薬師寺」 【間もなく】前期展示終了

早くも「鑑真和上と下野薬師寺」展は会期中盤を迎え、今週末の3連休(~10月10日)までで前期展示の期間が終了となります。

前期後期の展示替えの詳細については、出品目録をご参照ください。 ↓ ↓

http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/exhibition/kikaku/20220917ganjin/pdf/ganjin_mokuroku.pdf

今回は、あと数日で見られなくなってしまう資料のなかから、いくつかをピックアップしてご紹介したいと思います\(^o^)/

 

【栃木県にゆかりある鎌倉時代の武家の女性の筆跡】

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№21 東征伝絵巻 巻四   永仁6年(1298) 唐招提寺 重要文化財 

戒律を日本に伝えた鑑真さんの生涯を描く絵巻です。

鎌倉時代に戒律復興に努めた極楽寺(鎌倉市)の忍性によって、唐招提寺に納められました。

巻四は、6度目の挑戦によりついに唐から日本への渡航を果たすという場面が描かれています。

絵の素晴らしさもさることながら、巻四で注目されるのは詞書の筆者についてです。

「東征伝絵巻」全五巻は、巻ごとに詞書の筆者が違うのですが、巻四の奥書には、「筆師 足利伊予守後室」とあり、足利家時の妻(後室は未亡人のこと)の手によることがわかります。

彼女の父方は北条氏で、祖父の北条重時は忍性が住持を務めた極楽寺の開基という縁がありました。さらに言えば、「足利伊予守後室」は足利尊氏の祖母にあたる人物でもあります。

力強く堂々とした筆跡が見どころです。

後期は、東大寺での授戒場面などを描いた巻五と展示替えになります。

 

【作品保護のため、前期のみの展示に変更となります】※出品目録と異なります。

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№53 東大寺戒壇院指図(東寺百合文書) 鎌倉時代(12~13世紀) 京都府立京都学・歴彩館 国宝

教王護国寺(東寺)に伝来した東大寺戒壇院内部の様相を示す図面です。

天平勝宝7歳(年)(755)に建立された戒壇院は、治承四年(1180)に焼失しており、この資料は鎌倉時代の再建後の様子を伝えるものと考えられています。

『吾妻鏡』によると、鎌倉時代の戒壇院造営は、源頼朝の命をうけた千葉常胤と下野の武将小山朝政によるものといいます。

( 担当者より↓ )

これまでほとんど知られていなかった資料です。今回の展示が実質初公開ですので、お見逃しなく!!

 

【下野薬師寺の戒壇設置を伝える現存最古の写本】

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№91 東大寺要録 巻一 仁治2年(1241) 醍醐寺 重要文化財

『東大寺要録』は、東大寺の諸院、所領、諸会、別当、末寺の由来などに関する史料集で、そのうち醍醐寺に所蔵される本資料は現存最古の写本です。

そして、巻一の注目点としては、天平宝字5年(761)正月21日に淳仁天皇の勅により、下野薬師寺と筑紫の観世音寺に戒壇が建立され、授戒が行われたとの記述が見えることです。

正史である『続日本記』の同日条にはこの記事がないため、下野薬師寺の戒壇設置を知るうえで大変貴重な資料といえます。

 

【研究者からも初めて見た!とのお声多数あり!?】

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№94 七大寺年表 上巻 永万元年(1165) 大須観音宝生院 重要文化財

『七大寺年表』は、天武11年(682)から延暦21年(802)までにおける仏教関係記事を編年体で記載する資料です。

上巻である本資料には、『続日本紀』において天平勝宝6年(754)に下野薬師寺に下向したと記される、行信という高僧に関する記述が見えます。

行信さんは夢殿で知られる法隆寺東院伽藍を建立した人物です。

こちらもほとんど知られていなかった資料とのことで、ぜひ貴重な機会をお見逃しなく!

 

【実は口を開けています】

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№133 忍性菩薩像 鎌倉時代(14世紀) 称名寺(神奈川県立金沢文庫保管)

№21を唐招提寺に施入した忍性さんは、下野薬師寺で学んでいた審海さんを称名寺(横浜市)の長老に推挙した人物でもあります。

やや長い頭頂部に赤みのある大きな鼻は、忍性さんのお顔の大きな特徴となっています

没後間もない時期の制作と考えられており、細い墨線により緻密かつ明快に描かれたその風貌は、実際の人物を写す肖像画が隆盛した鎌倉時代ならではの作品といえるでしょう。

とくにのど元を見ると、皮膚の薄さを感じるような筋張った描線により、老齢の人物の特徴を写実的に捉えていることがよくわかります。

 

~前期後期の期間とは異なる変則的な展示替え~

【2週間ごとに展示替えをしています】

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№26 長屋王家木簡 奈良時代(8世紀) 奈良文化財研究所 重要文化財

№27 長屋王家木簡 奈良時代(8世紀) 奈良文化財研究所

奈良時代の皇族長屋王の邸宅跡から出土した木簡です。このうち、令和2年に1669点が国の重要文化財に指定されました(No.26)。

木簡の記載からは、長屋王の邸宅には写経や仏像制作などに携わったさまざまな技術者が存在したことが確認されます。

そこには、信仰篤い仏教徒としての長屋王の活動の一端が垣間見えます。

№26と№27の木簡は作品保護のため、2週間ごとに、№26は2点ずつ、№27は1点ずつ展示替えを行っています。

いま展示されている木簡は、10月16日(日曜日)までの展示の予定ですので、ぜひご覧ください。


今回ご紹介した前期展示資料のほか、多数の資料が展示替えの予定となっております。

まだ観ていないという方は、ぜひ前期が終わる10月10日(月曜日・祝日)までに足をお運びいただければ幸いです。

そして、もちろん後期も魅力的な資料が盛りだくさん!

後期展示もぜひともお楽しみに、何度でもお出でくださいませ。

(半券でM割に→ http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/info/open.html

 

《担当学芸員による「見どころとっておき解説」 予約募集中》

1、9月25日(日) 歴史(古代)・考古分野について  【終了】

2、10月15日(土) 美術分野(彫刻〔古代〕・絵画)について

3、10月16日(日) 中世以降の美術(彫刻)・歴史分野について

各日 午後1時30分 ~ 午後3時、当館講堂(定員150名)、要予約(無料)

 

(人文課・久野)