先日、めでたく入館者一万人を超えた異界展ですが、一部展示替えを予定しており、5月22日(日曜日)で前期展示が終了します。
今回は、あと数日でみられなくなる前期展示の資料をご紹介します。
幽霊というと、どのようなイメージがあるでしょう?恐ろしい、不気味な、得体の知れない、あるいは亡き人に会える懐かしみを抱く人もいるかもしれません。
①幽霊画 穂谷筆 国立歴史民俗博物館蔵・画像提供
部屋の片隅の暗がりに、白い着物の女性がたたずんでいます。
一見、「誰かな」と思いつつ、違和感からよくみてみると、足もとはすっと消え、この世のものではないとわかります。
眉をひそめた表情は、恨みがこめられているような、悲しみをたたえているような......。
懐に差し入れた手は何を意味しているのでしょうか。
想像がふくらみます。
②幽霊図 国立歴史民俗博物館蔵・画像提供
①の幽霊画は、明暗の曖昧さがこの世とあの世の境をわからなくさせるような絵ですが、この幽霊図は明らかに異界のものという感じです。
あばら骨の浮いた青白い肌に、白目は光るように黄色くなっています。
やはり足はないのですが、まるでちぎれたような異様さがあります。
風になびく髪を口に噛みしめ、下唇に描かれた尋常ではないシワが、この幽霊の思いの強さを表すようです。
それに反して、まなざしは諦めや憂いを帯びているようでもあります。
控えめなやさしい手招きに、つい、呼ばれてしまわないよう、ご注意ください。
①と②は対照的な雰囲気ですが、幽霊となった経緯は人それぞれなのかもしれません。この人はどうして幽霊となって、現世にもう一度現れているのか、何か伝えたいことがあるのだろうか、そんなことを考えながらみてみると、その時々の感じ方によって、幽霊に対するイメージも変わってくるようです。
③水虎十式品之図 安政2(1855)年 国立歴史民俗博物館蔵・画像提供
各地で捕らえられたという10種類の河童を記した図です。河童にも種類があったとは驚きです!中にはスッポンのような河童もいたり、緑だけでなく青や肌色の河童もいたり、実にさまざま。
とくに正面と後姿を紹介する左上の河童は、享保元(1716)年に水戸で網にかかったとの注釈があります。網にからまる河童を想像すると、うす気味悪くも、少しまぬけな気もします。
これらの資料の実物がみられるのは5月22日(日曜日)までです!!
まだご覧になっていない方、もう一度ご覧になりたい方は、この機会にぜひ足をお運びください♪
*これからの異界展 関連事業*
・地獄絵絵解き 5月28日(土曜日) 午後2時~3時
講師:井上広法氏(光琳寺住職) 場所:当館講堂(定員150名)
備考:要予約(教育広報課028-634-1312) 聴講無料(ただし実物資料の観覧には観覧料が必要)
・担当学芸員による展示解説 6月4日(土曜日) 午後2時~3時
場所:当館展示室 備考:予約不要(要観覧料)
・講座「栃木の民話語り(異界)」 6月11日(土曜日) 午後1時半~3時
講師:栃木県民話の会連絡協議会会員・担当学芸員
場所:当館講堂(定員150名) 備考:予約不要(無料)
・体験談募集
本展会期中、あなたが体験した異界にまつわる出来事を募集しています。
当館展示室にて専用の用紙にご記入ください。
(人文課 久野)
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