5月9日(日曜日)、リレー講座「収蔵資料じまん話3~動物編②~」を開催しました。
リレー講座は、現在開催中の企画展「収蔵庫は宝の山!~博物館の資料収集活動~」の関連行事のひとつです。毎回、分野ごとの「宝」を各担当者が解説します。
今回は第3回目、担当は林学芸部長です。脊椎動物分野の宝についてのお話でした。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
講座の様子をご紹介します。
入場時には手指のアルコール消毒を実施しました。また、間隔に余裕をもって着席していただき、お話を聞いていただきました。
今回ご紹介するお宝は、3つ。
1つ目は、ニホンカワウソの胎子です。
動物園などで飼育されているカワウソは、コツメカワウソ。ニホンカワウソは、かつて本州・四国・九州に分布していましたが、現在は絶滅してしまったと考えられています。
こちらの標本は、出産直前まで発育した2頭の子カワウソの液浸標本です。桐箱の中に収められていたため、退色せずに色が残っています。目は開いていませんが、水かきが発達していること、爪が生えていること、体に毛が生えていることなどがわかります。
また、箱に書かれた文章を見ると、今から137年前の明治17年に、群馬県前橋市の利根川沿いでメスのニホンカワウソが捕獲されたこと、そのお腹から取り出された胎子であることがわかります。
この標本は、毎週日曜日限定で実物が展示されています。どのような標本なのか、どのようなことがわかるのか。ぜひ、実物をご覧になってご確認ください!
2つ目は、五九豪雪で大量死したニホンジカの骨格標本です。
1983年から1984年にかけて、全国的に大雪に見舞われました。この冬の記録的な豪雪が五九豪雪です。この影響で大量死したニホンジカを博物館が引き取り、全身骨格標本を製作しました。その数、238個体。
ニホンジカの全身骨格標本として残されているものは少なく、さらに短期間に大量の個体が集まっているコレクションは貴重です。
これらの標本を調査したところ、全体の半分以上が生後1年以内の子ジカであったこと、成獣ではオスとメスの比率が2対5であったことなどがわかりました。体が小さくて弱い子ジカがたくさん死んだこと、オスとメスでは、やはり体が小さいメスのほうが死にやすかったことがうかがわれます。
また、歯に注目してみると、個体によってすり減り具合に違いがあることがよくわかります。一部が展示されているので、展示室で見比べてみてください。
3つ目は、栃木県産カモシカの骨格標本です。
ニホンジカが短期間に集められた標本であるのに対し、こちらは1982年の開館から40年近く継続して集めた、全身骨格標本です。128個体あります。
カモシカの角は生え変わらず、一生伸び続けます。1年ごとに角に溝ができるため、角を見ると年齢がわかります。
当館の骨格標本を調べると、メスは26歳、オスは16歳が最高齢であることがわかりました。また、これらの標本を調べることで、有害物質等の蓄積状況の経年変化などがわかる可能性があります。
最後に、林さんからの問いかけです。どういったものが「宝」なのでしょうか。
皆様はどう思うでしょうか。「宝」の基準とはなんでしょうか。
林さんの考えは、「ある資料が『宝』かどうかは、それを見る人、扱う人の発想次第」。
どの資料がどのような意味を持つかは、その時の考え方や技術に縛られている。しかし、アイディアや今後の技術革新により、無限の可能性がある、と話していました。
現在開催中の第129回企画展「収蔵庫は宝の山!~博物館の資料収集活動~」では、各学芸員が選んだ「宝」を展示しています。たくさんの収蔵品の中から、いろいろな発想で厳選した「宝」を、ぜひ実際にご覧ください。また、企画展の関連行事は以下の日程で開催を予定しています。
● リレー講座「収蔵資料じまん話」 ※13時30分~15時、要予約
5月23日(日曜日) 「収蔵資料じまん話4~民俗編~」
● 展示解説 ※両日とも14時~15時
5月15日(土曜日)、6月6日(日曜日)
● 学芸員とっておき講座 ※両日とも13時30分~15時、要予約。
5月16日(日曜日) 「しゃべる押し葉標本」
6月20日(日曜日) 「美術工芸収蔵資料じまん話」
● 新収蔵庫ガイド ※両日とも11時~12時、13時30分~14時30分の2回開催、要予約
6月12日(土曜日)、6月13日(日曜日)
みなさまのご参加をお待ちしております。
(自然課 半田)
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