ナスヒオウギアヤメ、花が咲いています!

ナスヒオウギアヤメの花が見られる季節になりました! 520日現在、栃木県中央公園では日本庭園・むつび池や、昭和大池・かえで橋の近くなどで、たくさんのナスヒオウギアヤメが青紫色の花を咲かせています。

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日本庭園・むつび池

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昭和大池・かえで橋の近く

昨年までは、毎年5月の中ごろに、中央公園と博物館による「ナスヒオウギアヤメの鑑賞会」が行われてきましたが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、残念ながら鑑賞会は中止になりました。

そこで、なぜナスヒオウギアヤメが中央公園にあるのか、ふつうのアヤメとはどこが違うのか、ここでご紹介したいと思います。

なぜ中央公園にあるのか?

ナスヒオウギアヤメは、1962年、宮内庁・生物学御研究所の川村文吾氏が那須町一樅(ひとつもみ)の水路で発見した、アヤメのなかまです。昭和天皇が研究され、後に東京大学の原寛氏、黒澤幸子氏が新しい植物として発表した、栃木県だけに自生する植物です。しかし、近年では数が減っており、絶滅が心配されています。

ナスヒオウギアヤメは、発見後に皇居で栽培されたあと、2004年に7株が栃木県に下賜されました。「栃木県民の観覧に供して欲しい」という、昭和天皇の思いからです。そして、そのうち2株が、昭和天皇在位50周年を記念して建設された栃木県中央公園に移植されたのです。その後、中央公園によって少しずつ株分けが進み、20205月現在で120株ほどにふえています。今年は、5月末ころまで、たくさんのナスヒオウギアヤメが来園者の目を楽しませてくれることでしょう。

アヤメとどこが違うのか?

アヤメのなかまの花には、6枚の花被片(花びら)があり、内側の3枚を内花被片、外側の3枚を外花被片と言います。

下の2つの写真を見てください。左のアヤメでは、内花被片が立ち上がり、少し離れたところからでもわかるくらいの大きさがあります。一方、右のナスヒオウギアヤメでは、内花被片はアヤメよりもずっと小さく、うっかりすると見逃してしまいそうです。

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アヤメ              ナスヒオウギアヤメ

さて、もう少し、話を広げましょう。みなさんは下の2つの植物を知っていますか。


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カキツバタ                ノハナショウブ

どちらも内花被片が大きく、立ち上がっており、アヤメにそっくりですね。アヤメとはどこが違うのでしょうか。花びらの色? いえいえ、アヤメ、カキツバタ、ノハナショウブの花びらの青色や紫色には、さまざまな色合いがあり、見分ける決め手にはなりません。

答えは、アヤメでは外花被片に網目模様があること。カキツバタやノハナショウブは、アヤメのなかまではありますが、外花被片に網目模様はなく、代わりに一本の細長い「すじ」があります。ちなみに、この「すじ」はカキツバタでは白色、ノハナショウブでは黄色です。

以上の4種類は、日本に昔から生えているアヤメのなかまですが、国内では他に、以下のような種類がよく植えられています。

・キショウブ(西アジア~ヨーロッパ原産):花びらが黄色。

・イチハツ(中国原産):薄紫色の花びらに、とさかのような突起がある。

・ジャーマンアイリス、ダッチアイリス(栽培品種):花が大きく、鮮やかな色。

なお、中央公園には、アヤメとナスヒオウギアヤメが植えられていて、日本庭園・むつび池では、2種類が近くにあるので、比べることができます。

(自然課・星)