とっておき講座「タイムマシン130年前のカワウソの標本」を行いました。

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2017年1月15日(日曜日) 13:30~15:00 栃木県立博物館研修室において、林学芸員により表記の講座が行われました。

この日の朝は中央公園の池の大部分が結氷するほどの寒さでしたが、講座には30余名の方々にご参加いただきました。

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 栃木県立博物館には、130年前の明治17年(1884年)に採集されたニホンカワウソの標本(茶色の毛が残るオスメス2頭の赤ちゃんの標本)が収蔵されています。

スクリーン上の写真は、左半分の二頭がニホンカワウソの液浸標本、右半分が標本の入っていたガラス瓶とそのガラス瓶が収められていた桐箱です。

 栃木県立博物館には、コツメカワウソの剥製とニホンカワウソの剥製が保管されており、今回の講座ではそれらもご参加の皆様にご覧いただきました。

標本が収められている桐箱には、採集された日付や場所、標本となった経緯までが読みやすい楷書で毛筆により記載されています。以下はその記載の一部です。

「当町字下河原中利根川ニ接続シテ寅ケ淵ト称スル野地ニ清水湧出スルアルヲ以テ平素此流水二鰻魚を貯置ス」

 この文章に基づき、林学芸員は群馬県前橋市の群馬県庁脇にある前橋公園を訪れ、実地踏査をいたしました。この公園は明治38年に建設され、ニホンカワウソの標本個体が採集されたのはそれ以前の時代です。現在は近くを利根川が流れ、明治時代の地形と変わっている点もあるかと思われますが、当時の面影を偲ぶことができました。

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 記載によれば、明治17年3月15日の夜に捕獲されたようです。「翌日之を屠フレハ牝牡の胎児在リ」とあるように、雌雄の胎児が捕獲されたメスの体内から取り出され、保存されたようです。

 林学芸員によれば、丁寧に前処理されて固定され、適切な保存液中に入れて桐箱の中で暗黒中に保存されたため、130年経っても状態が良好だということです。上の写真は、胎児の標本をじっと見入っている参加者の皆さんです。まさに、現在日本では絶滅したニホンカワウソが、タイムマシンに乗り、過去からよみがえったかのようです。

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 これは、桐箱の裏面の文字を解読している皆さんの様子です。

今回は、130年前に捕獲されたニホンカワウソの貴重な標本を皆様に観察していただきました。現在は日本では絶滅していますが、過去にこの動物が実際に生存していた確かな証拠です。博物館が過去の貴重な資産を確実に保管し、次の世代に残しておく意義の大きさを、今回は改めて認識いたしました。

 (自然課 浅羽記)