現在開催中のテーマ展「私たちの生活と鉱物」の開催期間が、いよいよ残り1週間を切ってしまいました。(2015年1月25日(日曜日)までの展示となります。)
さて展示の内容をピックアップしてご紹介するシリーズの最終回となる第5回目は、「レアメタルと都市鉱山」についてです。
テレビなどでよく耳にする”レアメタル”ですが、レアメタルとは一体どのようなものなのでしょうか。
レアメタルは直訳すると「珍しい金属」ですが、レアメタルの定義はそれほど単純ではありません。レアメタルとは、『地中の埋蔵量が少なく』、『金属単体として抽出するのが難しく』、『産地が偏っている』金属資源のことです。
レアメタルは現代の「私たちの生活」において、非常に重要な資源となっています。スマートフォンやテレビ、パソコンなどのハイテク機器はもちろんレアメタルのかたまりですが、何気ない日用品にも数多くのレアメタルが使われています。
レアメタルを含む鉱物は色々ありますが、今回はその中のいくつかをご紹介します。
まずはリシア雲母です。リシア雲母にはリチウム(Li)が含まれています。
リチウムは電池に欠かせないレアメタルです。腕時計や小型の電子機器用のボタン電池に使われていますし、携帯電話やパソコンなどのバッテリーにもリチウムが使われています。
展示中のリシア雲母とリチウム電池です。淡紅色のきれいな鉱物です。
次は、チタン鉄鉱です。その名の通り、チタン(Ti)が含まれています。
チタンは軽くて強い金属で、構造材やゴルフクラブ、メガネのフレームなどに使われています。また、近年ではガラスなどの表面に酸化チタンをコーティングすると汚れや水滴が付きにくくなることが発見され、研究・応用が進められています。
チタンの材料となるチタン鉄鉱とメガネです。
続いて紹介するのは、天青石(てんせいせき)です。
展示中の天青石です。
天青石は写真のように青く透明で美しい鉱物です。天青石は、ストロンチウム(Sr)というレアメタルの材料になります。天青石は青い鉱物ですが、ストロンチウムは赤色の火薬の材料になっています。赤い花火や、自動車の発煙筒などにストロンチウムは使われています。
その他にも、ステンレスの材料となるクロム(Cr)を含むクロム鉄鉱、乾電池に欠かせないマンガン(Mn)を含む菱マンガン鉱、蛍光体や磁石などに大活躍のレアアース鉱物などなど、レアメタルを含む鉱物をたくさん展示しています。
このように、ありとあらゆる場面で私たちの生活の要となっているレアメタルですが、冒頭でご紹介したように、埋蔵量が少なかったり、産地が偏っていたりしす。特に日本ではレアメタルの大半を輸入に頼っています。そのため輸出国の政策により供給量が左右されたり、採掘に伴う公害を産出国に押し付ける形になったりと、問題を抱えています。
そこで近年注目されているのが、「都市鉱山」という構想です。レアメタルや金、銀などの有用な資源を、国内の製品からリサイクルして取り出そうとするものです。
例えば、スマートフォン1台の中にも、金をはじめ色々な資源が入っています。
スマートフォンに含まれている主な有用元素です。
有用な元素を含む製品を回収してリサイクルすることで、国内で採掘していない資源を輸入に頼らず確保することができます。
「都市鉱山」です。家庭から出る使用済み製品の他、工場から出る不要な屑なども回収されます。
国内でのレアメタルや金・銀の採掘はほとんどありませんが、都市鉱山としてのこれらの資源の「埋蔵量」は自然の鉱山に匹敵するものがあります。
リサイクルや回収のための技術・手法は、まだまだ研究途中ですが、市役所や電気店で回収BOXが設置されているところもあります。
もし不要な携帯電話などがありましたら、ぜひともリサイクルにご協力ください。
今回の記事でテーマ展「私たちの生活と鉱物」のご紹介は最後となります。
展示期間も残り少なくなってしまいましたが、ブログの記事でご紹介したもの以外にもたくさんの展示品がありますので、ご覧いただけたら幸いです。
(自然課 小暮)
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