最終回は谷文晁の妹・谷舜瑛(たにしゅんえい、1772~1832)の「山水図」をご紹介したいと思います。
これまで水の表現として「線」「塗り」「色」と画家たちの工夫をみてきましたが、今回はどのような表現だと思いますか?
なんと!
「描かない」という表現です。
どういうこと?!と思うかもしれませんが、舜瑛はどのような工夫をしているのか、さっそく見てみましょう。
水を「描かない」とはつまり、取り巻く周りのものによって水を暗示するということです。
まずは、橋。
画面中央には木の生えた大きな岩の小島があり、それに沿って庵も建てられています。さらに隣の岩からも橋が架けられ、一人の高士が渡っています。これらがその下を流れる水を暗示しているのです。
そして、向こう岸の岩。
ここに描かれている岩は、手前に近づくにつれて色が濃くなっています。これは岩が水に濡れていることを表していて、水際であることがわかります。
では舜瑛はなぜ「描かない」表現を選んだのでしょうか。
まずあげられるのは、静かな雰囲気を感じさせることができるという点です。水の流れがほとんどないので、まさに“時が止まったような”静けさが演出されています。
また、この静けさからは、画面の外に続く広大な河も想像させます。
そしてもう一つは、空間のバランスです。遠くには大きな山がどっしりと構えていて、中央には島。もし、線や塗りによって水を描いていたら、画面の下の方に墨色が集中して、重たい感じの絵になってしまいます。
「描かない」という表現にも画家のさまざまな意図が隠されていることがわかりますね。
以上、4回にわたって作品を紹介してきました。「水」の表現は豊富にあり、画家がさまざま意図をもって描きわけていることがおわかりいただけたでしょうか。
他にはどんな表現方法があるのか、これから絵画を鑑賞するときに注目してみてくださいね!
テーマ展「水を描く」は9月8日(日曜日)までの開催です。会期も残り少なくなってきましたので、ぜひお早めに足をお運びください(^^♪
(人文課 瀬戸口)
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