考古部門活動記録:土器作り教室

 8月に宇都宮市立富屋小学校の梁木校長先生の依頼で、土器作り教室のお手伝いをしました。この企画の正式名称は「夏休み体験教室2008年 縄文土器を作ろう」といい、富屋小と富屋地区まちづくり連絡協議会が共同で行っているものです。スタッフには保護者も含め地域の方々が数多く参加していて、子供たちを学校だけに任せるのではなく、地域全体で育てていこうという意気込みが感じられる企画でした。
 体験教室は3回に分けて行われましたが、以下に順を追って紹介していきたいと思います。

●第1日目 8月2日(土) 「遺跡を歩こう」 
 この手の企画は土器を作って焼くだけというものが多いと思いますが、今回は梁木先生たちと相談し、子供たちに遺跡を理解してもらうことから始めようということになりました。そのため第1日目は、学校から2キロほど離れたところにある屋敷裏遺跡へ行き、本物の土器(片)や石器の落ちている様子を観察しました。また、土器の材料となる粘土はなるべく地元のものを使おうということで、遺跡の裏にある山へ行き、土器に使えそうな粘土を探しました。


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屋敷裏遺跡(南から)
 縄文中期の遺物が散布している。


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屋敷裏遺跡(北から)

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粘土採取の様子
 崖面を削って使えそうな粘土を探す。

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粘土採取の様子
 力仕事だが小学生もがんばって手伝っている。

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選別作業
 とってきた粘土から不純物を取り除く。

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粘土をこねる
 とってきた粘土は粘性が足りなかったため、市販のものと混ぜていく。この作業が一番大変。小学生もがんばっているが、とても子供の手に負えるものではない。サポートの方々と一緒に、夕方までかかって、ようやく人数分の粘土ができあがった。


●第2日目 8月9日(土) 「土器を作ろう」 
 粘土を1週間寝かせ、いよいよ土器作りが始まりました。参加児童は5・6年生が中心ですが、中には4年生もいます。もちろん、土器作りは全員が初めてです。
 今回は「縄文土器を作ろう」という企画なので、縄文土器の複製品や写真をいくつか見せ、それを参考に作ってもらいました。児童たちは初めて触る粘土に悪戦苦闘しながらも、見よう見まねで土器を作り上げていきました。土器作りは、大人でも簡単にはできません。最後の仕上げはこちらが手伝ったとはいえ、ほぼ全員が土器を完成することができたのは立派だと思います。


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作業風景
 参加児童は約20名。縄文土器についての簡単な解説をしてから土器作りを始めた。

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作業風景
 回転しやすいように、朴の木の葉を下に敷いている。作り始めて1時間もすると、最後まで休まないで一気につくりあげる子から、のんびりと作り上げる子まで、それぞれの子供の個性が見えてくる。

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作業風景
 文様を付けているところ。それらしいものになっている。

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この日の作品
 縄文土器風のものから独創的なものまで、それぞれの作者の個性が出ている。

●第3日目 8月31日(日) 「土器を焼こう」 
 予定では30日でしたが、あいにくの雨で順延。この日も天気が心配でしたが、持ち直しました。土器は十分に乾燥が進み、とてもよい状態になっています。あとはうまく焼けるかどうかが問題です。
 子供たちの作った土器は、最後に手直しをしていますが、接合部の甘さやひび割れを完全には修正しきれていません。そのため、普段よりはかなり手間をかけ、慎重に焼くことにしました。その結果、把手などの一部が剥がれたものもありましたが、ほとんどの土器は完形のまま焼き上げることができました。焼き方もさることながら、山でとってきた粘土と市販の粘土を手間暇かけてよく混ぜ込んだのもよかったのだと思います。なお焼き上がった土器は、このあと富屋地区市民センターに展示され、下野新聞の記事にもなりました。
 今回の企画は、学校・地域の方々・博物館が協力し合って実現したものです。博物館でもこうした連携事業は取り組むべき課題として位置付けていますので、今後も積極的にやっていきたいと考えています。次は自分たちの作った土器で料理をし、それを試食するというところまで持って行けたらと思います。


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焼く前の準備
 朝方まで雨だったので、土器を焼く前に地面を十分に乾燥させる。その余熱で水分が残りやすい土器の底も乾燥させる。

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土器を並べる
 写真ではよくわからないが、このくらいの状態でも近づくと非常に熱くて危険。そのため、土器焼きの作業は全て大人が行っている。

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土器を焼く
 いよいよ土器焼いていく。木材が土器に触らないように注意。

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土器を取り出す
 そばに近づけないので、棒の先に引っかけて取り出す。落として壊れたら作った子供に泣かれてしまうので、慎重に慎重に。

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焼き上がった土器と記念撮影
 予定が1日延びて他の行事と重なってしまったため、全員が参加できなかったのが残念。


(考古部門 上野・森嶋)