7月19日(土)からテーマ展「巡回展 栃木の遺跡」が開催されていますが、実際の資料は展示室で見ていただくこととし、ここでは展示に向けて行った資料調査の様子などを紹介したいと思います。
6月6日 下野市
下野薬師寺歴史館で展示中の、薬師寺稲荷台遺跡出土資料を調査。中心は何といっても縄文時代草創期の爪形文土器。県内ではこれまで小破片の出土例しかなく、これだけまとまった資料が発見されたのは初めてです。
薬師寺稲荷台遺跡出土爪形文土器
薬師寺稲荷台遺跡調査状況
実はこの遺跡は、昨年10月に爪形文土器が出土したという知らせを受け、現場を見学させてもらっている。その時の写真がこれ。土器は土坑中央の壁際から出土した(写真を撮っている人物の足下)。
薬師寺稲荷台遺跡出土爪形文土器出土状況
土器以外では、石鏃・同未成品・石核と剥片の接合資料などが出土している。
続いて、下野市南河内図書館での調査。ここでは、最近復原され話題になったた甲塚古墳出土の馬形埴輪が展示されています。
甲塚古墳出土馬形埴輪
一番手前の馬鐸が付けられた一体を特別に貸していただけることになった。今回の展示の目玉のひとつ。左奥は下野市教育委員会の山口氏。
博物館での展示作業
大きくて重いため、特別に木枠を作り、専門の業者に委託して搬入した(7月14日)。
次は国分寺図書館脇の資料整理室へ。ここでは三王山南塚1号墳・2号墳の資料を見せてもらいました。これらの古墳は県内でも最古級の古墳です。南河内町史編纂に伴い20年くらい前に調査が行われ、出土した一部の資料は当館で常設展示用に借用しています。最近再整理が進められ、多くの土器が復原されていたため、今回の巡回展への借用をお願いしました。
復原された古墳時代前期の土師器
6月20日 宇都宮市 とびやま歴史体験館
雀宮東田遺跡から出土した古墳時代の木器、下西原遺跡から出土した縄文時代中期の土器・石器、土師器などの借用をお願いしました。
雀宮東田遺跡出土木器
鋤の一部と考えられる。埋没した河川跡より出土。
下西原遺跡出土土器
加曽利EⅠ式(新)。宇都宮市域では最大の縄文土器。
下西原遺跡出土土製耳飾り
下西原遺跡は今年度も調査しているというので、館へ帰る途中現場に立ち寄りました。遺跡の場所は、桑島大橋を東進し、国道408号線に突き当たったところです。
下西原遺跡竪穴住居跡
縄文時代中期の住居。
下西原遺跡竪穴住居跡
こちらは古墳時代後期の住居。カマドがついている。
7月4日 大田原市
川西小学校遺跡の土器を調査に黒羽の芭蕉の館へ行きました。
川西小学校遺跡出土土器
これらの6個の借用をお願いした。
続いて、なす風土記の丘資料館湯津上館へ。ここでは旧湯津上村教育委員会が掘った、品川台遺跡出土資料を調査しました。この遺跡の資料は、一部湯津上館でも常設展示していますが、大部分は未公開のままです。今回の調査の結果、縄文早期・前期の土器に加え、スタンプ形石器や箆状石器など、同じ時期の石器類も大量に出土していることがわかりました。
なす風土記の丘資料館湯津上館での調査風景
石器類が大量に出土しているので重い。奥の人物は学芸員の真保氏。
最後に
今回の展示は、当館企画展示室の一番奥の部分でやっています。
前の方で「田中正造展」や「高原山の自然」といった企画展が行われていてわかりずらいと思いますが、企画展示室へ入ったら、とにかく奥を目指してください。
(考古部門 上野 森嶋)
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