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2008年01月18日

栃木県所有(栃木県立博物館保管)「野州麻の生産用具」国指定重要有形民俗文化財の指定答申について

平成20年1月18日に開催された国の文化審議会(会長 石澤良昭)は、栃木県が所有(栃木県立博物館保管)する「野州麻の生産用具」361点を国の重要有形民俗文化財にするよう文部科学大臣に答申しました。資料の概要を紹介します。

1.野州麻について
 栃木県の鹿沼市をはじめ栃木市、旧粟野町、旧葛生町など足尾山地東南麓一帯で生産された麻をいいます。少なくとも江戸中期頃から鹿沼や栃木の問屋を通して全国に出荷され、下駄の鼻緒の芯縄や織物、魚網、綱等に加工されました。近年はマニラ麻や化学繊維の普及等により生産量は減少していますが、神事等に利用される他、横綱の綱、神官の狩衣、山車の引き綱、弓弦等の原料として伝統芸能、伝統工芸の世界では欠かせないものになっています。
現在、栃木県における麻の栽培面積は786aで全国の約91%、生産物である繊維採取量は2728kgで全国生産の約70%を占めています(いずれも平成17年の厚生労働省資料による)。また、平成19年度の麻の栽培農家は26軒(県薬務課調べ)となっています。

2.文化財の特色
 これら資料は、麻の国内最大の産地である鹿沼市とその周辺地域で行われてきた麻の栽培及び繊維の生産に用いられてきた用具をまとめたものです。麻は日本の伝統的な繊維であり、木綿が普及する以前から衣類や魚網、綱などの原料として用いられてきました。江戸時代以来の麻の栽培と繊維生産の変遷を示すものとして特色があります。

3.指定資料の説明
麻の栽培と繊維の生産には、種まき、中耕・除草、麻ぬき、麻切り、湯かけ、麻干し、麻はぎ、麻ひき等の工程があり、その過程において、種まき機械、アサキリボウチョウ(麻切り包丁)、鉄砲桶(テッポウオケ)、ヒキゴなどの用具が用いられています。この地域にとっては一般的な用具ですが、種まき機械を使った播種は他に例がなく、またテッポウオケやテッポウガマを使った湯かけも全国では珍しいものです。また収穫に用いるアサキリボウチョウや繊維に加工する時に用いるアサヒキバコ、ヒキゴも他の地域とは異なる形状のものです。これらは、日本の代表的な麻の生産地であるこの地域の実態を示すものであり、日本における植物性繊維の生産・利用の変遷を知る上で重要なものです。なお、これら資料は、4月26日(土)からはじまる春季企画展「野州麻~道具がかたる麻づくり~」で紹介いたします。
(人文課 篠﨑茂雄)

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野州麻の生産用具

投稿者 : 人文課 | カテゴリー : 民俗部門活動記録