文化の日新収蔵庫ガイド

博物館には、みなさんご存知の企画展やテーマ展といった展示に関する仕事だけでなく、資料の収集や整理・保管という普段はみなさんの目に触れることの少ない仕事もあります。そこで、資料の収集・保管している収蔵庫の様子を知っていただく機会として、無料入館日である11月3日(水)に、昨年3月に完成したばかりの新収蔵庫棟の見学ツアーを行いました。

定員いっぱいの20名の方々に参加いただき、動物、植物、地学の自然系3分野の収蔵庫を見学していただきました。当館学芸員が栃木県立博物館で収集している標本とそれらを永年的に保管する建物の構造や特徴を紹介し、標本そのものを収集、整理、保管する意義などについてお話しました。

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資料の搬入や搬出の時にトラックが入るトラックヤードの説明

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収蔵庫の入口に設けられている前室に入る様子

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動物収蔵庫見学の様子

参加者の方々は普段は見られない収蔵品や設備を目の前にして、関心を持って見学をしていました。

(自然課 井上)

 開催中の企画展に合わせて、10月31日(日)に記念講演会を行いました。

 記念講演会は、「低湿地遺跡からわかること」と題しまして、大田原市なす風土記の丘湯津上資料館長の上野修一氏にお話しいただきました。たくさんの方にご参加いただき、ありがとうございました。

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 上野氏は、元当館学芸部長で、日本を代表する縄文時代の研究者の一人です。以前から低地に所在する遺跡の重要性をご指摘されていました。

 今回のテーマである「低湿地遺跡」という言葉は聞き慣れない方も多いかと思います。水が豊富な土中は空気に触れにくく、酸素不足となります。そのため、腐食が進みにくく、植物の遺物が残りやすいのです。一般的には、このように植物の遺物を多量に含む粘土や、砂などからなる遺物包含層が残されている遺跡のことを低湿地遺跡と呼んでいます。

 栃木県内では、小山市寺野東遺跡と鹿沼市明神前遺跡が全国的に知られた低湿地遺跡として挙げられます。

 上野氏は、大学一年生の頃、低湿地遺跡(貝塚)で全国的に有名になった福井県小浜市鳥浜貝塚の発掘調査に参加されていました。当時の発掘調査の様子や現場の裏話などをお話しいただきました。

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(こう)矢板(やいた)のすぐ外に迫る水面(1975年)

福井県若狭歴史博物館

画像提供 若狭三方縄文博物館

 みなさん、この写真に写っているボーダーTシャツの後ろ姿、誰かお分かりになりますか?

 上野氏と今回の講演会の打合せをして、図録をご覧になっていたその時、突然「ん?この服、この後ろ姿はおれだ!」「この服を着ている写真がある!」と言いました。

 私たちは何も知らず、偶然、上野氏が写っている写真を選んでいたようです。「これは何かの引き合わせかもしれませんね」などと話しながら、皆で本当にびっくりしました。

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 この写真は約50年前に撮られたものです。当時18歳の上野氏ですがイケメンですね~

 また、恩師の故渡辺誠先生が調査された、京都府舞鶴(まいづる)桑飼下(くわがいしも)遺跡についてもお話し頂きました。特殊泥炭層の分析に、地質学・花粉学・動物学・植物学などの分野が参加し、学際的研究を導入した遺跡です。総合的な縄文時代の古環境復元を目指しました。その後、鳥浜貝塚の調査にも導入されました。

 渡辺誠先生は先月、大変残念ではありますが9月14日に他界されました。渡辺先生との思い出話をとても懐かしそうにお話しされていました。弟子入りされた時のお話しや、4度の禁足のお話しなど思い出が尽きません。特に縄文時代の植物食に関するご研究は、多くの考古学研究者に影響を与えてきたのではないでしょうか。

 近年、低湿地遺跡の調査件数の増加ともに、考古学研究と合わせて、植物学・動物学・民俗学など他分野の研究が取り入れられるようになってきました。総合的に研究することによって、当時の人々のくらしを考える上でより多くの手がかりを得られるようになりました。改めて、低湿地遺跡の発掘調査から得られる情報の多さと、その重要性が分かりました。今後、さらなる発見と調査研究が進むことを期待したいです。

今後も関連講座が予定されています。

11月7日(日)13:30~15:30 定員150名 要予約 聴講無料

関連講座②「栃木の貝塚研究最前線」

講師:栃木県考古学会顧問 竹澤謙 氏

    栃木県考古学会会員 細谷正策 氏

実際の発掘調査や研究について、直接お話が聞ける貴重な機会です。

また、以下のイベントもありますので、是非ご参加下さい。

11月13日(土)  14:00~14:30 定員20名 要観覧料

11月23日(火・祝)14:00~14:30 定員20名 要観覧料

スポット展示解説

企画展示室に直接お集まり下さい。部分的に解説いたします。どこを解説するかは当日のお楽しみです。

11月21日(日)13:00~17:00 要観覧料

トークフリータイム

資料を見て気がついたこと、感じたことなどを話しながら、気兼ねなく展覧会を楽しんで頂ける時間帯です。

みなさまのご参加をお待ちしています。

(人文課 中山)

10月30日(土)に、講演会「宝石の魅力を科学する ~なぜダイアモンドはキレイに見えるのか~」を開催しました。この講演会は、元々、夏の第130回企画展「鉱物と宝石の教室」の記念講演会として8月8日に開催される予定でしたが、栃木県の緊急事態宣言発令に伴い当館が休館となったため中止となりました。しかし、第130回企画展終了後にも関わらず、本講演会の講師である日独宝石研究所所長の古屋正貴氏のご厚意により開催が実現しました。本講演会の開催の周知は10月に入って始まりましたが、当日参加を含めて84名の方々のご参加をいただきました。受付では、古屋氏が用意した講演会のレジュメや3Dメガネが配られたほか、机の上に置かれたA~Dの4つのカットルビーがどの順で価値が高いのかというクイズが用意されており、受付を済ませた方々がまじまじと観察してその答えを予想していました。講演会は当館講堂で換気のために扉を開放したままで行われ、参加者にはグループごとに間隔を空けた着席をお願いしました。

当館岩石・鉱物分野担当の吉田学芸員が司会を務め、講演会に先立って、近藤館長から挨拶がありました。

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その後、古屋氏の講演が始まり、宝石学の歴史や宝石の三要素(美しさ・耐久性・希少性)、ダイアモンドの美しさの理由について詳しく説明がありました。

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宝石学の紹介の中で、ルビーには天然ルビー、処理を加えた天然ルビー、合成ルビー、模造石があることが説明され、それぞれ受付に用意されていたA~Dのルビーに該当することが明かされると、見分けのつかなさに驚きの声が上がっていました。途中の休憩では、古屋氏が新たな宝石を机に並べると、多くの参加者が見に集まり個別に古屋氏に質問していました。休憩後には、ダイアモンドの美しさの理由について、ダイアモンドの高い屈折率・分散度により特有の強く美しい輝きがもたらされ、さらに人間の目の錯覚によりダイアモンドが美しく映っていることが説明されました。両目で見える像が違うことから起こる錯覚について、3D画像のダイアモンドを見ることでわかりやすく体感できました。

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あっという間に、興味深い講演が終わってしまいましたが、その後の質疑応答でも年配の方から子供まで幅広い世代から質問があり、皆さんの宝石に対する関心の強さを感じました。講演会終了後も、多くの方々が古屋氏の宝石を眺めたり、古屋氏に直接質問をしたり余韻が冷めやらぬ様子でした。

(自然課 北野)

 令和3年10月9日(土)から開催中の企画展に合わせて、10月23日(土)に関連講座①が開催されました。

 今回は、「民俗事例から見た植物利用~栃木県と福島県の県境地域を中心として~」と題しまして、当館名誉学芸員であり、とちぎ未来大使でもある柏村祐司氏にお話しいただきました。大勢の方にご参加いただきありがとうございました。

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 山間部における民俗事例から、縄文時代の人々の木と木の実の利用の一端を探るお話はとても興味深く、改めて民俗調査の重要性を感じました。

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 栃の実は、飢饉や食糧不足を補うための救荒食として山間部で保存され、利用されていました。栃の実の採集時期は、秋の彼岸の頃になります。ヤマノクチアケと呼ばれる採集解禁の取り決めがあり、住民が等しく採集できるようになっていました。栃の実のシブ出しやアク出しの方法については地域によって方法に違いが見られます。

 また、栃の実採集に使うカゴや、大きい袋ものなども紹介され、縄文時代の遺跡から出土する編み組み製品と比較しても、その使い方には共通点がありそうです。素材となる植物や木の皮などは身近なものを使い、素材の採集時期、保存についても興味深いお話を聞くことができました。

 基本的な知識や技術といったものは代々伝えられたものであり、伝承の大切さを痛感しました。

 栃の実やドングリなどの木の実を広げて、実際に見て頂きました。

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 企画展示は11月23日(火・祝)まで開催中です。今後も記念講演会や関連講座が予定されています。

10月31日(日)13:30~15:30 定員150名 要予約

記念講演会「低湿地遺跡からわかること」

講師:大田原市なす風土記の丘湯津上資料館長 上野修一 氏

※聴講には当日の観覧券が必要です。

11月7日(日)13:30~15:30 定員150名 要予約 聴講無料

関連講座②「栃木の貝塚研究最前線」

講師:栃木県考古学会顧問 竹澤謙 氏

   栃木県考古学会会員 細谷正策 氏

 実際の発掘調査や研究について、直接お話が聞ける貴重な機会です。みなさまのご参加をお待ちしています!

(人文課 中山)

11月6日(土)講座「栃木の民話語り」中止のお知らせ

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11月6日(土曜日)に予定をしていた講座「栃木の民話語り」は、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のための適当な措置を行うことが難しいため、中止いたします。

楽しみにしていてくださった皆様には、大変申し訳ありません。

 

この冬、12月11日(土曜日)から3月27日(日曜日)までの会期で開催する

テーマ展「昔のこと知ってっけ?~道具を知れば暮らしが見える~」では、

1月8日~3月26日の毎週土曜日、14時30分~15時に、

関連講座「おじいさんやおばあさんの民話語り」を計画しています。(予約不要・要観覧料)

各回、栃木県内各地を中心に活躍されている語りべの方々が、さまざまなお話を語ってくださる予定です。

お楽しみに!

※ 新型コロナウイルス感染症の影響等のため、実施方法の変更や中止をする場合は、当ホームページや館内への掲示にてお知らせいたします。

みなさんこんにちは。

10月16日、土曜日に博物館でやってみよう!「昔の暮らし体験②洗濯板(せんたくいた)、水桶(みずおけ)」を行いました。その様子を少し紹介します。

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水道がなかったころ、井戸や川から水を運ぶために水おけを使っていました。

これも子どもがお手伝いしていたのです。水がめをいっぱいににするために何度も往復しました。

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また洗たく機がなかったころ、洗たくは川や井戸の水でたらいと洗たく板を使って手洗いしていました。さあチャレンジ!

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天びん棒に首を通して肩にかついで。うーん重ーい!でも当時はもっと中身が入っていました。コツをつかめばうまくかつげたようです

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洗たくは洗たく板を上手に使って布どうしをこすり合わせます。お母さん気分でごしごしと。

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干す前にしっかり布を広げます。

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最後に形を整えて風で飛ばないように洗たくばさみで押さえて終わります。今のボタンひとつの洗たく機とは大ちがいですね。

昔の暮らしのようすが少しわかったかな。参加していただいた皆さま、ありがとうございました。

次回の博やろは、11月23日・火曜日(祝)「昔の暮らし体験➂昔のおもちゃ」です。小学生対象のイベントで、14時から15時半までの開催です。ご予約は不要ですので、ぜひお気軽にご参加ください。

教育広報課 相子・荒川

みなさん、こんにちは!

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10月17日(日曜日)の県博デーに、キッズツアー「博物館的☆おはなし会」を行いました。

ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!

当日の様子を、ちょっとお知らせします。

  

今回のキッズツアーは、図書館や学校で行われている「おはなし会」を、博物館的にやってみよう!というものです。

おはなし会のメニューは色々ありますが、今日は「手遊び」と「絵本の読み聞かせ」に、博物館的なお話をプラスしてみました。

  

手遊びは、みんな良く知っている「グーチョキパーで何作ろう?」です。

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カタツムリは巻き方に、右巻きと左巻きがあるので、右手がチョキで左手がグーはカタツムリ、左手がチョキで右手がグーはヒダリマキマイマイ、とやってみました。

グーを作るときは、親指を残りの4本指で握りこんでね。

  

絵本の読み聞かせは、「からたちばやしのてんとうむし」という絵本です。

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からたちばやしのニジュウヤホシテントウは、意地悪で欲張りで、他のテントウムシたちは、困らせられたり、怖い目にあわされたりしていました。

  

読み聞かせの後は、博物館的なお話です。

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絵本の中で、テントウムシが会話をしたり、お葬式をしたりするのは、作られたお話ですが、実は、テントウムシの一年の様子に、自然の本当のことが、たくさん入れられているのです。

博物館の昆虫の先生に聞いたり、私が調べたりした内容であって、絵本の会社や作者に聞いたものではないことは、ご了承ください。

例えば、ニジュウヤホシテントウの子どもが、じゃがいもアイスを食べすぎたのか、お腹をこわしてぽっくり死んでしまいましたが、ニジュウヤホシテントウは、ジャガイモやナスの葉を食べるテントウムシだから、じゃがいもアイスだったり、怖い目にあわされるフタホシ・ヨツボシ・ムツボシテントウは、みんな同じナミテントウだったり、ひりひりけがわの毛虫は草食だから、命の危険はありませんが、あとの二つは...。

  

最後に、特別に収蔵庫からお借りした、ニジュウヤホシテントウ、ナナホシテントウ、ナミテントウの標本を見ながら、みんなで観察しました。

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みなさんが、博物館と図書館の、両方を大好きになってくれると嬉しいです!

  

次回、11月21日(日)のキッズツアーは、「おまじないの世界」です。

鬼たちを追い払う!? おまじないはどんな人が行い、願いをこめたのかな? ディープな世界にご案内します。

みなさまのご来館を、心よりお待ちしております!

  

  

(教育広報課 解説員)

コロナ対応の影響により中止となってしまった企画展「鉱物と宝石の教室」の記念講演会ですが、講師の方のご厚意により10月30日(土)に開催することになりました。
現在、以前予約された方への連絡を進めておりますが、新たな予約も受付ております。
お申し込みは028-634-1312まで。
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10月2日(土)、足利市で観察会「クビアカツヤカミキリの幼虫が食べている木を探してみよう」を開催しました。

今回の観察会は、現在開催中のテーマ展「クビアカツヤカミキリ ~話題の害虫まるわかり~ 」の関連行事です。

クビアカツヤカミキリは、中国や朝鮮半島、などに生息する外来の昆虫です。幼虫は、生きたサクラやモモ、スモモなどのバラ科の樹木内部を食べて枯らしてしまうため、特定外来生物に指定されています。栃木県でも2017年に足利市と佐野市で初めて被害が確認され、広がってしまっています。

今回の観察会は、クビアカツヤカミキリの幼虫がどのような被害を出しているのかを見ていきたいと思います。

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事前に注意事項を含めたクビアカツヤカミキリの被害と生態についての説明がありました。

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サクラの幹には、成虫の脱出孔(楕円形の穴で、クビアカツヤカミキリが木の中から出てきた穴)やフラスが確認できます。(フラスとは、幼虫が出した木くずと糞が混ざったものです。)

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サクラの幹から出ていたフラスを採集します。フラスはクビアカツヤカミキリだけではなく、ウスバカミキリ、コスカシバの幼虫も出すため、この後調べてみます。

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採集したフラスを顕微鏡で観察しました。

今日見つかったフラスは、ほとんどがクビアカツヤカミキリでしたが、コスカシバのものもありました。

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今年は壬生町で初めてクビアカツヤカミキリの被害が確認されました。

クビアカツヤカミキリの被害拡大を防ぐには、早期発見、防除を地域全体で行う必要があります。

今回の観察会では、クビアカツヤカミキリの幼虫による被害とフラスの見分け方について参加者は、熱心に話を聞きながら学んでいました。

ぜひ、クビアカツヤカミキリのフラスを見かけたら、おしえて下さい。

なお、テーマ展「クビアカツヤカミキリ~話題の害虫まるわかり~」の関連行事は下記の日程で開催される予定です。

展示解説

展示を見ながら、担当学芸員が見どころを分かりやすく解説します。

日時:2021年11月14日(日)14:00~15:00

講師:栗原 隆(当館学芸員)

会場:テーマ展示室

定員:20名

※参加費は無料ですが、館内を観覧するため、別途観覧料が必要です。

(自然課 永嶋)